きっと誰にでも「あの時、ああしていたら人生変わったのに」という話の1つや2つあるだろう。今さら悔やんでも仕方ないかもしれないが、今回は、私がサハラ砂漠で「あの時、英語でもっとスムーズに会話できていたら……」という話を紹介したい。
経緯を説明すると長くなるので省略するが、理由あって、私はアフリカ大陸モロッコのサハラ砂漠で「ラクダ使い」になるため、現地で生活しているベルベル人に弟子入りすることになった。ラクダも触ったことない英語も話せない……それでも面白いかもしれないと思ったからだ。
ラクダ使いの仕事
ちなみに「ラクダ使いの仕事」とは、世界中から訪れる観光客を、サハラ砂漠の冒険旅行へといざなうことである。なかでも選ばれしラクダ使いたちは、砂漠の中にある人気ホテルと契約を交わして観光ガイドの仕事を担っている。「選ばれし」というのは、世界中の言葉を自在に操り、人間にも動物にも優しく接することができる、いわばヒーロー的存在のラクダ使いのことである。
そんなスター軍団から、ラクダの座らせ方や立たせ方、砂漠を歩く際の注意点などを学んだ。特に、ラクダを何頭も引き連れて歩く際には「1番後ろにいるラクダのペースを常に確認しなければいけない」らしい。すべてのラクダがロープでつながれているため、ペースが早ければ首が引っ張られるし、遅ければ前のラクダを追い越そうとするからだ。
忘れられない1日
そんなこんなで、なんとか無事に研修というか修行を終えた私は、無事にサハラの地でラクダ使いのデビューを果たすことができた。世界各地からやってくる観光客をラクダに乗せて砂漠を歩く毎日……相変わらず英語は苦手だが、日本人特有の「勤勉さ」と「おもてなし精神」が観光客のハートをつかむと信じることで、引け目を感じずポジティブに接客をすることができた。
そして、あれは中国人の団体客を連れて「砂漠に沈む美しい夕日を眺める」というツアーに出発した時のことだ。もちろん私は中国語も分からないが、なんというか、空気的に「なぜかアジア人がラクダを引いているんですけど」みたいな話題で、彼らが異常に盛り上がり始めたのである……。
「後編」へ続く!
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